テキストに求められる二つのこと


これから勉強を始める、もしくは、来年の試験に向けて勉強方法を見直そうとしている方に向け、使用するテキストや問題集に関してアドバイスさせていただきます。

現在使用しているテキストが、自分の志望する受験枠と同等なレベルの解法パターンを網羅しているようであれば、それをそのまま使い続けてください。解法パターンとは、いわゆる問題の解き方です。受験に臨むにあたり、使用するテキストは試験の合否を左右するものです。そのため、テキストには、その試験に合格するために必要な問題の解き方を網羅(概ね掲載)していることが、まず求められます。

たとえば、高卒レベルに合格できずに、高卒の方が大卒区分の試験にチャレンジするような場合は注意が必要です。高卒レベルの問題集は、大卒レベルの問題の解法パターンを網羅できていないからです。

そして、使用するテキストにはもう一つ大事な条件があります。それは、解説が充実していることです。つまり、テキストには解法パターンを網羅していることと、解説が充実していることの2点が求められるわけです。

予備校のテキストは、予備校の講師が説明をすることで解説が完成するように作られていることが多いです。あまり詳細に解説を載せると講師が不要になりますし、講師が要らないことに生徒が気づけば、授業の存在価値がなくなります。そのため、予備校のテキストは、授業で説明する余地の残した簡素な解説しかなされていないことが多いのです。だから独学には向きません。あくまで授業あってのテキストなのです。

「いや、そんなことはない。うちの予備校のテキストは解説が充実しているよ」という声が聞こえて来そうですが、仮にテキストの解説が充実しているのであれば、授業なんか出ないで自分で解いてしまえばよいことになります。問題を解いてみて、分からないところがあればその解説を読んで理解し、解き方を覚えてしまえばよいのです。授業に出るメリットがありません。

また、予備校にありがちな特典なのですが、授業が受け放題であることはメリットにはなりません。授業を聞いている時間があるのであれば、その時間を自分で解く時間にあて、テキストの解法パターンをさっさと網羅してしまったほうが、合格までにかかる時間が断然短くなるからです。

講師の話を聞いている時間。その話をノートに書き写している時間。これら2つの時間は、実は自分の頭はほとんど動いていません。言ってしまえば写経タイムです。勉強というものは、その問題を解こうと机に向かい、鉛筆をもったときに初めて頭が回転し始めるものなのです。だから、数的推理のような数学みたいな問題や、判断推理のパズルみたいな問題は、人の話を受動的に聞いてノートを取ったりするのではなく、いきなり問題を解くことにチャレンジし、分からないところは解説を頼りに理解して解けるようにした方が効率はよいのです。

大切なので繰り返しますが、判断推理や数的推理などは、いきなり自分で解いてみて、わからないところがあればすぐに解説を読み、その解説を理解し、解けるようになるまでその場で繰り返した方が効率がよいのです。これを繰り返して解法パターンを網羅すれば、少なくとも教養に関しては必ず合格レベルになります。これは、『スーパーエリートの受験術(有賀ゆう)』という有名な本でも紹介されているメジャーな勉強方法です。

少し考えてみてください。講師の板書が、市販の問題集の解説を上回るかどうかを。私には、授業時間内の限られた時間で書いた板書が、たとえ板書計画があったとしても、世間に販売するために時間をかけ練りに練られた問題集の解説を上回るとはとても思えません。

分からない問題に対する質問に対してすぐに回答してくれるような体制が予備校にあるのであれば予備校を利用するメリットもありますが、それがないのであれば、予備校に通うメリットは、モチベーションを高め合える仲間ができること、または、お互いの論文を見合える友達ができること以外にはほとんどないと言っても過言ではありません。自習室が利用できることは、地元の図書館がたいてい無料で勉強できることを考えれば大きなメリットにはなりません。そして、論文の添削は受けて見ればわかりますが、「この添削をどう次に活かせばよいのか分からない」といったレベルです。私の受講生全員がそう言いますので、はっきりとここで伝えます。

予備校のスタイルを私の立場で批判してしまうと、自分が儲けたいからだと思われるかもしれませんが、ほとんどの受講生がそう感じ、また、それを切に伝えてくるので、ありのままをお伝えさせていただきます。ちなみに、私は、東大法学部の友達と千葉大の理学部の友達と時間を共にすることが多いのですが、三人で居るときに、「もしもう一度大学受験をすることになったら予備校に行くか」という話に、なぜかなりました。3人とも「絶対に行かない」と断言していました。なぜなら、参考書を使って自分で勉強した方が絶対に早いからです。「市販の参考書が充実していること。何となくノートに板書を書き写し、受け身で勉強するのは時間の無駄であること」の二点で意見が一致しました。

いろいろと話ましたが、予備校の授業を受け、講師の解説をテキストにすでに書き込んであったり、ノートに書き写していたりすれば、そのままそのテキストを継続して使用するのがよいと思います。テキストを替えてしまうと今までに覚えた解放パターンも消えてしまいがちですから、それはそれで迂遠です。それに、当たり前かもしれませんが、予備校のテキストで合格できないわけではありません。私が皆様に伝えたいのは、これから勉強を始める人は、市販の参考書と予備校のテキストをよく比較し、予備校に何十万も払うメリットがあるのかどうかをよく考えて欲しいということです。実際に、私は予備校には通っていません。畑中敦子シリーズを繰り返しただけです。

今まで予備校で勉強してきた人で、授業をあまり聞いていなかった、ノートも取っていなかった、そして、テキストの解説やノートを見ても理解できないと言う状態であれば、予備校のテキストで勉強を続けるのは、市販の参考書を使うより時間がかかる結果になってしまう可能性もあります。

これから勉強を開始する人、自分の勉強方法を見直したい人は、ご自分の使っているテキストが、①解法パターンを網羅しているか、②解説が詳しいか(自分が理解できるか)をよく確認してみてください。